二人の創業者とNTNのDNA
ベアリングの国産化に挑んだNTNの二人の創業者。二人には、「開拓者精神」と「共存共栄精神」という大切にしていたふたつの精神がありました。NTNのDNAともいうべきその創業者精神は創業から100年を超えた現在も受け継がれています。
NTNの創業者
NTNの創業者は商人の丹羽昇と、技術者の西園二郎の2人です。当時20代前半であった2人の若者が、ともにベアリングの国産化を志したことからNTNの歴史は始まります。
丹羽昇
あふれる熱意でNTNを生み育てた初代社長
1898年、岐阜県高須町札野(現海津市海津町札野)に一家の三男として生まれました。商人を目指していた次兄・義雄の影響を受けて商人を志し、名古屋屈指の大商店で修行を積みます。熱心な仕事ぶりで営業成績は群を抜いており、商店の社長も丹羽を一人前の商売人として認めるようになりました。丹羽はやがて独立を果たし、次兄とともに商店を立ち上げました。
丹羽は、決して話し上手というわけではありませんでしたが、ひとつの問題を何時間も根気強く話し、話を聞いている相手もいつの間にか丹羽の熱気に引き込まれてしまうということが多々ありました。
1927年の合資会社エヌチーエヌ製作所設立時には、海外品が高いシェアを占めているという苦境に立たされていましたが、持ち前のあふれる熱意で奮闘を続け、着実に事業を拡大させていきました。
略歴
1898年(明治31年) | 岐阜県高須町(現海津市)に生まれる |
1919年(大正8年) | 次兄・義雄とともに共栄商会を設立 |
1920年(大正9年) | 社名を共栄商会から巴商会へ変更 |
1927年(昭和2年) | 合資会社エヌチーエヌ製作所設立(社長) |
1934年(昭和9年) | 株式会社エヌチーエヌ製作所設立(社長) |
西園二郎
NTNベアリング生みの親
1897年、三重県一志郡中原村(現松阪市嬉野町)に生まれ、幼くして同県の桑名市在住の親族である西園家の養子となりました。
1916年に桑名市内の富岡鉄工所に入社。約2年間にわたり手押しポンプの製造に従事し、製造技術を磨きました。1918年には、自らの手で西園鉄工所を立ち上げ、精米機などをつくるかたわら、紡績工場から持ち込まれたベアリングの修理を行っていました。
技術者として正規の学業を経たわけではありませんが、その明晰さと熱心さで日夜機械製造の研究に没頭し、夫人から注意を受けることも多くありました。
生涯を通じてベアリングの製造に注力し、1942年にはベアリングの国産化の功績が認められ、勲六等瑞宝章を受章しました。
略歴
1897年(明治30年) | 三重県一志郡中原村(現松阪市嬉野町)に生まれる |
1918年(大正7年) | 西園鉄工所を設立、ボールベアリングの研究製作を開始 |
1924年(大正13年) | 巴商会が新設したボールベアリング部と提携 |
1927年(昭和2年) | 合資会社エヌチーエヌ製作所設立 |
1934年(昭和9年) | 株式会社エヌチーエヌ製作所設立(常務) |
1942年(昭和17年) | ベアリング国産化の功績により勲六等瑞宝章を受章 |
創業者精神~開拓者精神・共存共栄精神~
NTNグループの創業者精神には、強い信念を貫き、新たなことに挑戦する「開拓者精神」と、自分たちの利益だけを追求しない「共存共栄精神」があります。この2つの精神にまつわるエピソードをご紹介します。
開拓者精神~輸入品に頼っていたベアリングの国産化へ~
丹羽昇は「将来性があり、いまだ誰も着手しておらず、生活の必需品となる、新しい商品を製造・販売することが大成の道である」という価値観を徹底して持っていました。
1922年、横浜港で海難事故にあった外国船にベアリングが積まれていることを知ると、迷うことなくそのベアリングを全品落札し、西園二郎率いる西園鉄工所で再生して販売しました。当時のベアリングは輸入品に頼っていたため高価で、当時の日本では用途が限定されていました。それでも丹羽は、近い将来ほぼすべての機械に必要不可欠となるベアリングの未来に着目し、ベアリングの国産化を決意しました。
丹羽は、再生品の販売で得た利益を元手に3台の研磨機を購入し、西園鉄工所に持ち込んで西園にベアリング製造の研究を依頼しました。当時、ベアリングはその存在が十分に知れわたっておらず、専用機械もない中、西園はひたすら試行錯誤を重ねました。
はじめは、形はできていても、材料や工程の研究が不十分で使用に耐えない不良品ばかりでした。納入先から使い物にならないと返品されることも多々ありました。
丹羽と西園はこうした状況にもくじけず、研究試作を根気強く繰り返し、品質の向上に努め、少しずつ事業を軌道に乗せていきました。
そこには社会に必要なベアリングの国産化に挑戦し続ける丹羽と西園の「開拓者精神」がありました。
その後、工業の発展に伴いベアリングの需要がさらに高まると、NTNは日本初の航空機用ベアリングや工作機械用精密ベアリングの開発に成功。1960年代には海外メーカとの積極的な技術提携や、他社に先駆けた海外進出を果たすなど、現在に至るまでさまざまな場面で「開拓者精神」を発揮しています。
創業者精神ムービー「挑戦者たち」より
共存共栄精神~ベアリングの国産化により産業の発展に貢献~
丹羽昇は幼少期に母親から「決して利益を独り占めしてはいけない。共存共栄を考えないと人は相手にしてくれない」と口癖のように言い聞かされていました。
1910年頃、日本には輸入ベアリングしかなく、ベアリング1個で金時計が買えると言われるほどベアリングは高価なものでした。このためベアリングの需要はほとんどが海軍のもので、民間のベアリングの用途は非常に限定的でした。
丹羽がベアリングの国産化に乗り出した背景には、当時5円で輸入していたベアリングを1円で国産することができれば、さまざまな産業の発展に寄与できるという未来を見つめた考えがありました。
丹羽のこうした考えの根底には、母の教えである「共にあり、共に栄える(共存共栄)」がありました。商売で利益をあげるだけではなく、事業を通じて社会や産業の発展に貢献するという丹羽の考えが、ベアリングの国産化への挑戦、そしてNTNの創業につながりました。
この「共存共栄精神」は、地球環境に貢献する省エネルギーのためのトライボロジー技術の追求や、独創的な新技術・新商品の開発によって世界中の産業の発展に貢献していくというNTNグループの事業活動の根幹を支えています。
創業者精神ムービー「挑戦者たち」より
創業者の精神を受け継ぎ、次の100年へ
これまでに紹介した「開拓者精神」と「共存共栄精神」は、現在のNTNの企業理念に受け継がれています。さらに、NTNグループでは創業者の精神を次の100年に受け継ぐための活動として「NTN PROUD AWARD」を開催しています。
企業理念の詳細はこちら
企業理念の実践の場「NTN PROUD AWARD」
創業者の精神を原点とする企業理念の実践の場として「NTN PROUD AWARD」を開催しています。世界中のNTNグループの全従業員から参加チームを募り、各チームは企業理念から派生した4つのカテゴリ(創造部門、サービス・ソリューション部門、社会貢献部門、グローバル部門)にエントリーします。各チームは、日々の業務と企業理念を結び付けた独自のテーマと目標を設定し、その目標の実現に向けてチャレンジします。活動期間の終了後に活動報告を行い、参加チームの中から優秀賞と特別賞、グランプリが選出されます。
2018年に開催された第1回では、世界中から約1,700名の従業員、全164チームが参加し、福祉施設の子どもたちへの支援に取り組んだルーマニアの販売・製造会社NTN-SNR RULMENTI S.R.L.のチームがグランプリを受賞しました。
NTNグループはこれからも「NTN PROUD AWARD」を継続的に開催し、創業者の精神を世界中の全従業員に受け継いでいきます。
第1回「NTN PROUD AWARD」グランプリチームの活動内容
福祉施設の子どもたちへの支援(社会貢献部門)
ボランティア団体と協力しながら、福祉施設の子どもたちの支援に取り組みました。子どもたちが巨大なキャンバスに自分の夢や友情をテーマにした絵を描くイベントを支援したほか、子どもたちが暮らす住居の改装に挑戦。ほとんどのメンバーは改装の経験がありませんでしたが、終業後や週末の時間を使って作業を行いました。また、工場の見学会も開催し、商品紹介やプレゼントなどで多くの子どもたちに楽しんでもらいました。子どもたちに喜んでもらえただけではなく、地域社会にも支援活動の輪を広げるきっかけとなりました。
未経験のことにも挑戦する「開拓者精神」と、子どもたちに笑顔になってもらいたいという「共存共栄精神」がいかんなく発揮された活動であるとして、見事初代グランプリに輝きました。
グランプリを受賞した
NTN-SNR RULMENTI S.R.L.(ルーマニア)のチーム